自分の家族は自分以外が霊感体質。
見た、聞いた、は当たり前だった。

その中で一番勘の強いのが妹。

そんな妹がチンピラと同棲してた。
DVもいろいろあったみたいだけど、なかなか離れようとしない。

ある日助けて、と連絡があった。
男のとこから逃げ出したいと。

チンピラ絡みで散々面倒はかけられたけど、助けないわけにはいかないので、チンピラの留守を狙って凸し、妹を助け出した。

2階からたぶんチンピラの家族に見られていたけど、連れて行ったもん勝ちだと思い、無視して妹を連れだし遠く離れたファミレスに行った。

妹の話を聞くと軽い軟禁状態にあっていたことが分かった。
顔に傷もある。

半分慰めながら、半分説教しながらでもようやく本気で離れる気になってよかった。

「余程怖い目にあったようだし・・・」と言うと妹は首を振った。
軟禁も傷もどうでもいいんだと。

ここからは妹の話。

チンピラと同棲中、いろんなものを見た。
そのいろんな者たちは心配するような目で遠くからだったり、窓ガラスの反射に映りながら自分を見ていた。

その中に一人婆さんがいた。

最初は遠くからだったけど段々距離が近づいてくる。
ヤバいかも、とは思ったけどほっといた。

そのうち割としっかり顔が認識できる距離に来ていた。
初め不安そうに見えていた表情は段々と怒っているように見えてきた。

ある日昼寝をしていて、目が覚めた。
体の向きを変えようと寝返りをうったら数センチの距離に婆さんの顔があった。
それは尋常ではなかた。

顔はどす黒い紫色、怒りで目が吊り上がり口もひん曲がっている。
人の顔じゃない。

一瞬気を失いかけたけどもう一度見た時には消えていった。

妹は一息ついて続けた。
チンピラの動向がひどくなってきてから婆さんが近づいてきたんだ。

婆さんは自分を助けようとしてたのに自分がいつまでも気付かなかったから怒ってあんなことになったんだろうって。

うーわぁ・・・と思いながら、まぁ婆さんのお蔭で逃げ出すこともできてよかったね、と言っておいた。

そういえば、妹を連れだす時に2階から見てたのはその婆さんかもしれないね、というと妹は笑いながらこう言った。

「いやいや、もっといっぱい見てたから」