俺が昔体験した話を一つ。
別に恐くはないと思うけど。

俺が小学校5年の夏に、結構な大風邪を引いたんだ。
熱が40℃近くあった。
とりあえず学校休んで朝一番に病院に連れて行かれ、昼前に帰ってきてベッドで寝転がってたんだ。

母親は俺の昼食を用意した後、仕事に行った。
貧乏だったからな。
休むわけにもいかなかったんだろう。

俺は軽く昼食を取り、戸締りを確認した後、テレビ観たり漫画読んだりしながら寝転んでたんだが、さすがに寝ないとよくならないんじゃないかと思い、目を閉じた。

しかし、なかなか眠れない。

喉は焼けるように熱いし、鼻が詰まってうまく呼吸は出来ないし、肺も痛くなって、本格的にしんどくなってきたんだ。
正直死ぬんじゃないかと思うくらいしんどかった。

しばらくうなされてたら、俺のおでこと胸のあたりに、誰かの手らしきものが乗っかってきた。

触ってみたら、どうやら若い女の人の手のようだった。

母親にしては細くてすべすべな気がしたが、ひんやりとして気持ちがよかった。

その手が触れてから、さっきまで苦しかったのがスーッと引いていって、その手が誰のものか確認する間もなく、すぐに眠ってしまった。

夜になって母親に昼に一度帰ってきたかどうか聞いてみたが、帰ってないとのことだった。
父親も仕事だし、その時間には確実に誰もいなかったはずだ。

あの時の女の人は誰だったんだろう。

正確には女じゃないのかも知れないけど、たぶん女の人だったと思う。
あれから現れたことはないけど、今もその人にはとても感謝している。

ありがとう。