俺には弟がいる。

これがちょっと変わり者で、変な事を言っては周りから煙たがられていた。
そんなこんなで友達がいない弟はよく一人で人形を使って遊んでた。

当時はガンダムやドラゴンボールなどが流行っており、ガチャポンと呼ばれるもので手頃な人形が手に入っていたのだ。

心霊現象を再現し、弟の反応を見ようと家中に弟の人形を丁寧に並べてニヤニヤしてたら、そんな日に限って父親が誰よりも先に帰ってきてぶん殴られたのもいい思い出だ。

ある日、内緒で人形に釘や絵の具で血を流してるように見えるように細工しようと、美少女人形を弟の人形箱から漁っていた所、変な人形を見つけた。

弟の趣味ではないだろうゴテゴテの日本人形が箱の脇の死角からこちらを見つめていた。
なかなかの大きさがあり、これはいいとその人形を引っ張り出し、さっそく作業に掛かる。

実は父親の所からくすねてきた釘はそこそこな大きさがあり、ガチャポン程度の大きさじゃ釣り合いが取れなかったのである。
だがこのサイズの人形ならちょうどよく不気味に見えるだろう。

綿密な計画の元、人形に7本の釘を打つ。
よりリアリティを出すため事前に釘を曲げておいたり、雨に晒して錆びさせておいたりと準備は万全だ。

美的センスの塊と自負してた俺はチャチなものでは納得がいかないのである。
やるなら本格的に、だ。

だが問題が起きた。
髪をボサボサにカットし釘を全て打ち終えた所で母親と弟が帰宅したのである。
これはまずい!と焦った俺は証拠隠滅のために窓から人形を隣の家の屋根にぶん投げた。

しばらくその事を忘れてたんだが、弟が「おにぃ、女の子の人形来てない?」と聞いて来た事で全ての記憶がパズルを嵌めたように軽い記憶喪失に陥っていた俺の感情を揺らす。

その場は一旦、犬が前にこのくらいの人形っぽいのを咥えてたの見たぞ?と誤魔化し、どうせみつかりっこないと一連の記憶を放棄した。

その人形が見つかったのはそれからたった数日後の事である。

隣の家のおっちゃんが雨漏りの修理のために屋根に上がったところ、なぜか日本人形が凄惨な姿で発見された。

恐ろしい事に何本もの釘が打たれ、血のような跡を残し屋根にしがみつくような異様な形で発見されたため、これはこの家に怨みを持つ者が呪いの一種として設置した物だろう。
平和な田舎に恐怖と戦慄が走ったのである。

皆が屋根を昇り自分の家に呪いはないかどうか確かめた程だ。
近隣の学校の生徒から取材が来たりと相当噂が広まったのだが、気味悪がった隣の夫婦はお寺にその人形を持ち込み燃やしてしまった。

隣の人柄のいい夫婦はそれが相当ショックだったようで、怪しい祈祷師や怪しい超能力者を呼んでいると、両親達が話していたのを覚えてる。

田舎なので風邪のように噂は広まり当然のように犯人探しが始まった。

あの家がおかしい、あの他所者はわしらが邪魔なんじゃ、と話題も少ない田舎ではそれぞれ好き勝手に噂している。
その中に弟も含まれ俺は全力で庇った。

噂は徐々に風化していき、犯人が謎のまましばらくたった時、弟が告白してきた。

「怖くて言えなかったんだけど、アレ、僕が探してた人形なんだ・・・。」

気が付いてはいたけど、お前は悪くない、だってあんな酷い事やってないんだろ?っと言ってやるとウン、と悲しそうに首を縦に振った。

この事は俺達の秘密だ、ところでどこであんな人形手に入れたんだ?と聞くと「ずっと遊ぼうってついて来てた。だけど急に来なくなったから安心してたら、隣の屋根にいたんだね。」と。

これが俺の地元に伝わる「人形」の真相である。

今ではこの話に尾ひれがついて夜中に窓から人形が覗いてる、夜中に走り回る人形・・・などに変化しているようだが。真実とは時に残酷なのである。