友人の話。

彼の実家は山中の村なのだが、そこに里帰りすると、必ず奇妙な体験をするらしい。
帰郷した翌日に目を覚ましてみると、起き上がることが出来ないというのだ。

腰が抜けたかのようにまったく力が入らない。
前日は大した運動もしていない筈なのに、至る部位に筋肉痛も感じる。

実家の人間に言わせると、夜中に河童と相撲を取ったのだろうという。
河童は眠り込んだ人を操れるそうで、意識のなくなった人を寝床から外に誘い出して、一晩中相撲を取って楽しむのだと。

友人は偶にしか帰ってこないので、河童たちも懐かしくて嬉しくて、ついつい相撲を取りまくってしまうのだろう。

家人はそう笑っていた。

友人「河童に知り合いはいないんだけど、家の者が言うには、この辺の河童は村の住民一人一人を皆覚えてるっていうんだ。別に眠るの待たなくても、相撲くらい付き合ってやるのになぁ。・・・あーでも、やっぱり一晩ぶっ続けってのは、勘弁して欲しいかなぁ」

友人はどこかしら困った顔でそう言っていた。