漫画家してるんです。
売れてないですけど。

漫画というのは担当編集者に見せるための「こんなお話なんですよ」っていうあらすじみたいなモノを作るんですが、ま、白い大きな紙にいきなり◯にチョンと顔を書き始める人もいればシナリオ形式に精密に描く人もいるんです。
私はシナリオ形式です。

んで、私も他の作家同様最初はファミレスでやってたのですが、どうも集中できない。
そこでノートパソコンを買ったのを期に、ランタンもって、ホワイトガソリンで湯を沸かすバーナーでコーヒーを作りながら山道の東屋ですることにしたんですね。

そこは「広域農道」というやつで、某山の裾野をぐるりと一周している最近できた走っても楽しい道なんです。
その途中に石でできた鳥居があって、もう土に帰ろうとしている参道が山の中に続いている、そんな所なんです。

作業に集中しちゃえば周りの状況などどうでもいいですし、霊と言われるモノがいても、エ×漫画のネームを練ってる漫画家にはなかなかちょっかいだしにくいようです。

しかしある晩、白い人影のようなものが神社から下りて来るではないですか。
私はとっさに東屋のテーブルの下に隠れました。

白い着物を着た、女でした。

霊かと思いましたが、駐車場に止めてあったカローラに乗り込むと走り去っていきました。

私は彼女が神社でなにをしていたのか気になって、参道を上がっていったんですね。

朽ち果てきった境内と思われる場所まで来ましたが、特に何もありません。

なあんだ・・・と、ま、一応お参りをして、振り返り、懐中電灯がもときた道の杉の木を照らした瞬間、無数に打ち付けてある藁人形の数々が、懐中電灯の明かりが届く限りいろんなところに・・・。

生きてる人間が一番怖いってことで。