亡きうちの婆さんが親父に語ったという話。

大戦末期、爺さんはのらりくらりと免れていたが、ついに出征の命令がきた。
爺さんは名誉なことなどとは思えなかったらしく、「もう生きて帰ってはこれない、俺はもう終わりだ」、と毎晩泣きながら酒浸りだったらしい。

婆さんはなんて臆病な男なんだろうと、ほとほと呆れ果てていたそうだ。

しかし、ある日爺さんは上機嫌で帰ってくると、婆さんにこう語った。
気まぐれに近所のお狐さんを参ったところ、お狐さんの声が聞こえたとか。

『そんなに死にたくないのならば、わしがなんとかしてやろう。その代わりに、休みの日は毎朝必ずここを掃除し、供え物を絶やしてはならない。』

婆さんはとうとうおかしくなったかと相手にしなかった。
しかしその日以来、爺さんは人が変わったかのように俄然やる気になって、意気揚々と戦地へ向かった。
婆さんはあんな臆病者がとても戦場で生き抜くことはできないだろう、と半ば諦めて送り出した。

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